kodama Gallery
Katsuhisa Sato I set out to be pretending

Press Release

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 児玉画廊(白金)では11月12日(土)より12月24日(土)まで、佐藤克久「ふりをしたつもり」を下記の通り開催する運びとなりました。佐藤は今年のあいちトリエンナーレ2016(名古屋市美術館会場)と、その会期中名古屋市内二カ所で展覧会が並行する等、益々精力的な制作発表を続けています。
 児玉画廊では昨年の個展「さひつかうとさ」以来の新作発表となり、主にあいちトリエンナーレに向けて制作された最新の作品群を中心に、さらに最新作を交えた内容で構成されます。トリエンナーレ会場では、作品個々の内容を踏まえた上で観客にそれを伝えるための説明的な展示というよりも、あえて淡々と一本調子の展示をすることによって観る人が作品をどう捉えるのかを試すような構成でした。対照的に児玉画廊(白金)の多面構造のスペースとの兼ね合いにおいては、作品そのものの遊戯的、示唆的な側面が強く引き出され、同じ作品であっても新たに異なるニュアンスを垣間見ることができるでしょう。
 佐藤の絵画は、多くの場合それが一体何を表しているのか、鑑賞者によって全く異なる見え方をします。作品の全体像よりもディテールの特殊な部分(それも些細なことの場合が多い)や思いがけないような点がその作品の本質を決定付けていることも珍しくなく、そこに気付くか否かによって作品の見え方が180度異なると言っても過言ではありません。おおまかに言えば、作品が抽象であるか具象であるかの判別すらその人それぞれに異なる判断をする、そのレベルにおいてニュートラルな状態に意図的に留められているのだと言えます。作中に何かを見たとして、それを注視している内に何らかの疑問を抱いてしまう。そうした迷いを生じさせる何か罠のようなものが佐藤の作品には潜んでいます。
 佐藤の作品では、筆運び一つ、色彩や画面構成、サイズ感、画材選択、それらは感覚的になされるものではなく、あらゆる行為が作家自身の中で整えられ、論理的に構築された上でキャンバスへと落とし込まれていきます。よって、もし鑑賞者がその作品を前にして迷うことがあるならば、それは佐藤の思惑通りに迷わされているのであり、逆にこれはこういう意味だと疑いも持たずに思い込んだとするならば、それもまた自らに疑いを持って反証してみなければならないでしょう。柔和な、軽やかな装いをしつつ、その裏側に怜悧さが潜んでいるからこそ魅力があるのです。作家はその駆け引きを恐らくは期待し、そして楽しんでいるのです。
 佐藤の作品は、大半が抽象的な様相、例えばキャンバスの厚みやフレームの存在に対して意識的な作品や、シンプルな図形の繰り返しや曲線の幾何学的な重なりを描いた作品も多く、一見するとオーソドックスなフォーマリズムをなぞっているようにも見受けられます。しかし、一枚の絵画として完全に自律し、完結させていくような考え方は佐藤には当てはまりません。どちらかと言えば、展示環境や併置される作品との関わりにおいて新たな側面が次々引き出されてくるなど、完結(一枚の絵画として外界と切り離された独立性を持つという意味での)ではなく未完結であることを意図して選択している節さえ見られます。例えばデカルコマニーのように二つのキャンバスを用いて複写するようにした作品、まったく同じ構図ながらストロークや色彩を逐一変えていくシリーズ作品、キャンバスの側面(厚みの部分)に載せた色彩が壁面に反射する作品、折り目を構図に取り入れた作品など、そうしたアプローチの一つ一つが、鑑賞者が絵画のみを、それ単体として見ることを阻害しているようにさえ思われます。画面の中のいわゆる「絵画」の要素だけでなく、キャンバス自体が物体としての存在を主張するようであったり、壁面にかけられることが前提とされていることに意識を向けさせること、他の作品との関わりによって初めて面白さがわかるような関連性を示すことなど、佐藤の作品は、なぜ、いかにして、そこに絵画が絵画として存在しているのか、その問いを改めて我々に向かって投げかけているようです。
 今回の個展「ふりをしたつもり」では、佐藤が作品において示そうとしている意図が巧妙に暈されて提示されます。佐藤が『○○の「ふりをしたつもり」の●●』を描いたとしても、それが鑑賞者にも同様に●●が○○を表象しているのだと読み取ることができるかといえば恐らくそれはなく、場合によっては大いに勘違いをしたまま佐藤とは全く違ったものを作中に見出しながら、確信を持って作品を後にしていくことすらあり得るのです。絵画を見るという行為の中に潜んでいる勘違い、認識のズレ、佐藤はそれをはっきりと認識した上で、「ふりをした」と断定的に言うのではなく、「ふりをしたつもり」と惚けてみせるところに、ノラリクラリと明言を避ける佐藤の良い意味での質の悪さが垣間見えます。展示構成、作品構成、さまざまなレベルに潜んでいる罠や仕掛けをかいくぐって、佐藤の本意を見つけるか否か、運任せのような作品との駆け引きを存分にお楽しみ頂きたいと思います。つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。



敬具
2016年11月
児玉画廊 小林 健



記:

作家名: 佐藤克久 (Katsuhisa Sato)
展覧会名: ふりをしたつもり
会期: 11月12日(土)より12月24日(土)まで
営業時間:

火曜日-木曜日、土曜日: 11時‐18時
金曜日: 11時-20時
日・月・祝休廊

オープニング: 11月12日(土)午後6時より



お問い合わせは下記まで

児玉画廊
〒08-0072 東京都港区白金3-1-15
T: 03-5449-1559 F: 03-5421-7002
e-mail: info@KodamaGallery.com 
URL: www.KodamaGallery.com


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