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杉本圭助 (Keisuke Sugimoto) artificial conditions

Press Release
 拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
児玉画廊(京都)では、11月30日より12月28日まで高田冬彦個展「MY FANTASIA」を下記の通り開催する運びとなりました。
高田は映像作品を中心として、パフォーマンスや写真などの制作を行っています。今展覧会が児玉画廊では初めての個展となりますが、それに先立って今年4月に開催された白金アートコンプレックス5周年合同展覧会「メメント・モリ~愛と死を見つめて~」(杉本博司キュレーション)に出品し、衝撃的な作品で観客の度肝を抜きました。
 制作の中核を成す映像作品の大半は、自らが演じ、プライベートな物が散乱する自宅を舞台としています。曝け出すように、そして恍惚として演じているその様子は、極度のナルシシズムや、すがるような狂信、偏執的な欲望の噴出であると思わずにはいられません。実際の所それがどうであれ、観る者にとっては、他人の秘する欲望の深淵を覗いてしまったような、あるいは自らの恥部をまざまざと眼前に突きつけられたような、衝撃と居心地の悪さを感じさせます。しかし、それと同時に、目を離せなくなる程にそそる何か、胸の奥底をざわつかせる何かがあるのです。
 高田の映像作品は時にグロテスクであったりエロチックであったりと、兎角過度な表現が付いて回りますが、その実、高田自身の性癖を露呈したものと言うわけではありません。さながら劇の役者のように、予め作品のために某かの「妄想」を設定し、実際に妄執するレベルまで自身の心理状態を到達させていく事によって作り上げられています。例えば最初期の作品"LEAVE BRITONY ALONE”(2009)では「ブリトニー・スピアーズの狂信的なファンが、ブリトニーになりきって見せ物小屋風オリジナルPVを自宅で制作している」という設定によって制作されています。自らをブリトニー・スピアーズの狂信者に仕立てるべく彼女の音楽を浴びるように聴き続け、衣装を真似て、彼我の混濁した境地へと没入していくことによって、高田の中で虚が真に限りなく近付くのです。「妄想へのめり込む為の精神的プロセス」と高田自身は表現していますが、高田の作品が単にポップアイコンやセックスシンボルを記号化した安直なシミュレーショニズム的作品ではないと断言できるのは、この点においてでしょう。以降、基本的にこの姿勢は高田の映像作品を貫いています。
 今回の個展では、既に制作されている映像作品"JAPAN ERECTION"(2010)、"MANY CLASSIC MOMENTS"(2011)、"VENUS ANAL TRAP"(2012)、"LOVE EXERCISE"(2013)、そして最新映像作品とインスタレーションを加え、児玉画廊の2フロア全てを使用して展示致します。初期の代表作とも言える"JAPAN ERECTION”は、ヤマトタケルに扮した高田の下半身に日本列島の形の男性器の模型が取り付けられており、それを振り回して狭い室内にある様々な物を吹き飛ばし、破壊していく一部始終、という作品です。(YOUTUBEに公開されている映像は現在170万再生以上。) "MANY CLASSIC MOMENTS”はロープにつながったスカートを穿き女装した高田が陶酔するようにワルツを踊る映像で、自らロープを引っ張ってスカートを捲れ上がらせつつ、薄暗く散らかった自室でステップを踏み続けます。"VENUS ANAL TRAP”は臀部にハエトリソウの模型を取り付けて、オーケストラのコンダクターのようにベートーベンの田園に合わせてタクトを振るいつつ屈伸する様子を仰角に見上げる構図で捉えた映像作品です。"LOVE EXERCISE"では、自身は演者ではなく、半裸のモデルの体中にいくつもの小さな男女の人形の顔を取り付け、その人形同士を選んで「キスさせろ」と命じる高田の指示に対して、モデルは無理な体勢を強いられ必死に体をよじらせて従う、というものです。"LOVE EXERCISE"以降、妄想を自己陶酔的に演じるだけでなく、それに他者との関わりを混ぜ込む展開を試みています。最新作品では、フリーダ・カーロやジョージア・オキーフなどの著名な女性作家を始め、各界、各時代の名だたる女性の頭部のオブジェをトーテムポールのように積み上げていく行為と、それに伴うあるパフォーマンスを映像化したもので、展覧会では撮影に使用した頭部のオブジェを空間に持ち込んでヴィデオインスタレーションとして展示致します。
 憧れとコンプレックスの狭間にあって破裂しそうなほどの熱狂と陶酔、独りよがりの自己満足でいてそれ故に孤独に苛まれているような背反する心、覗き趣味、露出願望、etc.。高田が没頭するように演じ、その映像によって自虐的なまでに露呈させているのは、善悪、明暗のような判断に適うものではなくもっと人間的な深淵に触れてくるものです。VIto Acconciの ”centers” 宜しく、作家自らに、そして鑑賞者全てに向けて心の奥を人差し指で一突きにするかのように、逃れられぬ業のようなものを指し示してくるのです。そしてあまりの不意に狼狽える我々を冷笑するかように、「MY FANTASIA」、高田の自由気ままな作品演目による響宴をさぁどうぞお楽しみください、と皮肉にもさらりと言ってのけるのです。つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具
2013年11月
児玉画廊 小林 健



記:

作家名: 高田冬彦 (Fuyuhiko Takata)
展覧会名: MY FANTASIA
会期: 11月30日(土)より12月28日(土)まで
営業時間: 11時‐19時 日・月・祝休廊
オープニング: 11月30日(土) 18時より

お問い合わせは下記まで

児玉画廊
〒601-8025 京都市南区東九条柳下町67-2
T: 075-693-4075 Fax: 075-693-4076
e-mail: info@KodamaGallery.com 
URL: www.KodamaGallery.com


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