拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊|東京では2月20日(土)より3月27日(土)まで関口正浩
個展「平面B」を下記の通り開催する運びとなりました。
関口は現在京都市立芸術大学の博士過程に在籍しておりますが、
その作品からはまさに次世代のペインティングにおける新たな動
向の芽生えを予感させます。弊画廊では、若手の作家をいち早く
ピックアップするプログラム、Kodama Gallery Project において
自身の初個展「うまくみれない」をフィーチャーした後グループ
ショーやアートフェア等でも積極的に紹介し好評を得ております。
関口の描画手法とは、いわゆる刷毛やナイフによるものではなく、
まず樹脂版に油絵具を塗り伸ばし、それらを生乾きの状態ではが
して皮膜を作り、それをキャンバスに貼り付けるという方法が取
られています。貼り付ける際には接着剤代わりに絵具を使用しな
がら、上に上にと何層にも皮膜を重ねていく事で、最終的には一
枚の「平面」として完成されつつも、その実、重層的に内在され
た様々な色彩と皮膜の重なりによって有機的でポリフォニックな
3次元的「平面」となっています。色彩の皮膜が重ね合わされる
際に偶然生まれる皺や破れ、増幅され続ける張りと緩みのリズミ
カルな緊張感、作業中についた指の跡や絵具の飛沫までもが相互
に作用し合い次第に一つのテクスチャーを成していく様は、多少
の拡大解釈をするならば、筆で塗り、乾かし、重ねていくオイル
ペインティングのプロセスそのものであって、キャンバス上で時
間の経過とともに色面が作られるのではなく、一定のプロセスを
すでに経て作られた色面をキャンバス上に突如出現させるという
大きな逆転があるにせよ、それはまぎれもない「オイル・オン・
キャンバスのペインティング」として成立しています。
しかしながら、そうした特殊なプロセスを用いる事によってまる
でテキスタイルやコラージュのようである、という既視感を抱か
せ、あるいは画面構成を一目見れば過去数多存在した色面構成の
抽象絵画の模倣として看做される可能性は想像に難くないですが、
であればこそ、そうしたやや批判的な視点で見れば見る程に関口
の特異性が際立つとも言えます。膜である以上、色彩そのものが
ソリッドなのであり、キャンバスに乗る前段階として既に絵具と
しての流動性から離れた性質へと変化している事によって、単純
に「色彩」という視覚情報的な概念に留まらず、関口自身がそう
しているように、触れる、伸ばす、千切る、手触りと体感的な行
為で扱い得る「物」であるという前提、それが故に、塗るという
行為の範疇では到達し得ない関口の特異性、「面」としての表情
が成立しているのです。今回発表される新作では、多様な色彩の
膜を端切れのようにし、キャンバス上に散りばめる構成をしてい
ます。初個展時には、特定の一色を作品ごとにフィーチャーし、
それはまさしく膜による平面であることを実証するかのようでし
たが、今回は対照的に膜の断片を多数用いることで皺や襞がより
誇張され、それらが色彩の膜であるという構造上の特異性と同時
に、それと連関して色彩が物質感を伴って自立するという視覚的
な効果によってもその異彩を放っています。
在籍する研究室の部屋の名前から付けられた「平面B」という今
回のタイトル、取って付けたようでありながら、言外には、Aで
はなくBである、つまりはおよそ特異点としての自己を静かに断
言しているのかも知れません。つきましては本状をご覧のうえ、
展覧会をご高覧、ご宣伝を賜りますよう、何卒よろしくお願い申
し上げます。
敬具
2010年2月
児玉画廊 小林 健
記:
作家名: |
関口正浩 (Masahiro Sekiguchi) |
展覧会名: |
平面B |
会期: |
2月20日(土)より3月27日(土)まで |
営業時間: |
11時‐7時 日・月・祝休廊 |
オープニング: |
2月20日午後6時より |
お問い合わせは下記まで
児玉画廊|東京
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15
Tel : 03-5449-1559 Fax : 03-5421-7002
E-mail :
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