拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊|東京 では 11 月 19 日 ( 土 ) より 12 月 24 日 ( 土 ) まで、野原健司個展「とびとび」を下記の通 り開催する運びとなりました。 野原は、ペインティング、ドローイング、立体、インスタレーションと、幅広い制作を続け、独自の世界 観を表現してきました。日々の生活の中、ふとした瞬間に感じる違和感や疎外感、鏡やガラスに映る反転 世界の中に想像する非日常など、野原の作品は常に現実と非現実の危うい境界線上にあります。
「気になったものをランダムに寄せ集めていくと、意味が生まれる直前の状態に近くなる。」と、自身の制 作について説明する野原の言葉は、その作品におけるイマジネーションと形態の希有な結びつきについて の理解の助けになるように思います。野原の作品は、ペインティングでも立体でも、ファウンドオブジェ クト的あるいはコラージュ的に、様々な素材 / 要因を引っ張り込んだ、ある種混沌とした世界観がまず目 を奪います。その構成要素の一つ一つは、普通に見ればゴミ、あるいはガラクタ同然のものではありますが、 しかしそれは、野原が日々観察し、何故か「気になった」という野原にとっては特別なものです。この「気 になった」という動かしようのない磁力のような結びつきが生まれたことで野原のイマジネーションが加 速度的に解放されていきます。それら「特別な」素材を寄せ集めていくと、例えば人が思考する際に言葉 や五感など様々な情報を重ね合わせていくように作品の中で重なり合う様々な要因が、野原自身想像だに しなかったような面白い現象を起こしたり、予想外の意味が生まれてくる、その瞬間を作り出すことこそが、 野原の制作に対するモチベーションとなっているのだと先の言葉から感じます。 今回は初めて映像作品を主体としたインスタレーションを展示します。日常的に写真や映像を撮り、物体 以外の「気になった」シチュエーションを集めている野原ですが、これまで映像や写真を作品として発表 した事はなく、新たな展開と言えますが、作品としてはこれまで通り、「気になった」ものを寄せ集める、 ということに終始しています。電車の窓を流れていく雨の夜景、盆踊りを踊る人々のシルエット、波、蜘 蛛の捕食、電波不安定なラジオの音楽、それぞれはやはり書き連ねたところで繋がる点は見出せませんが、 野原の手にかかると全てがパズルのピースのように噛み合って、すっと異世界への境界線上に誘い出され たように、妙に納得させられてしまいます。「とびとび」という今回の展覧会タイトルは、野原自身ですら 自覚する程に飛躍したイメージの結びつきが、映像という新たな手法によってより強固に表現されている ことに因みます。新作の映像作品の他、ドローイング、立体作品も交えた展示構成となっております。つ きましては本状をご覧の上、展覧会をご高覧、ご宣伝を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
作家名: | 野原健司(Kenji Nohara) |
展覧会名: | とびとび |
会期: | 11月19日 (土)より12月24日(土)まで |
営業時間: | 11時‐19時 日・月・祝休廊 |
オープニング: | 11月19日日午後6時より |