拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊(京都)では、7月18日より8月29日まで宮永亮個展「Wondjina」を下記の通り開催する運びとなりました。
宮永は今年3月に京都市立芸術大学大学院絵画専攻造形構想を修了、在学時より映像作品によるインスタレーション、VJなど幅広い創作活動、発表を続けてきました。「アートアワードトーキョー丸の内2009」(行幸地下ギャラリー)や「ヤング・パースペクティブ2009」(イメージフォーラム)への出展など、より多くのオーディエンスの目に触れる経験を積みながら、より積極的な活動を始めています。
今回展示される「Wondjina」(2009年)、「RAINY LETTER」(2008年)はいずれも水や雲など自然の風景を撮影した実写の映像断片のみを素材として、様々な効果、加工を駆使し、編集されることよって作り出される映像作品です。
宮永にとって映像とは、現実を記録する為の媒体として、においや感触を残す事は出来ないという点において感覚的に不完全なものであり、更に、予め三次元のものを二次元に減じるという制約が与えられている点においてもまた不完全であり、しかしながら、その不完全性こそ映像が美術表現であり得る理由である、とも捉えています。
宮永の作品は大量の映像素材を編纂する事で完成されますが、断片的に記録されたそれぞれの映像は個々に独自の事象を捉えた物であるがために、一つの時間軸を伴う作品として紡いでいくためにはその断片の、言い換えればそれぞれの事象に繋がりを持たせる為の意味を与える或は見出す行為が必要になります。宮永の映像作品において、「与える」行為とは映像の加工によって特定の意図を与える事、それは時には半ば強引なエフェクトによって自然ではあり得ない状態を作り出す事や複数の映像断片を重ねてより多くの情報を視覚的に与える事であり、また「見出す」行為とは宮永によって映像化された事象/現象が根源的に何であるのかを探る行為、つまりは宮永の美意識が感応する理由がその映し撮られた事象/現象に見出されるのならば、それら全てを普遍的なものとして感じられる所にまで掘り下げ、自ら読み解いていく事によって、例えば平易な言葉で物語を編むようにして、一つの作品として纏めていくという行為にあたるのでしょう。
あるいは、物事に隠された1つの秘密を見つけ出そうとする試みであると言っても良いかもしれない
1つの秘密とは、普遍性と言うものの正体でもあろう (宮永 亮 )
不完全性から喚起されるのは作家にとっても見る側にとってもイマジネーションの飛躍、或は増幅、それらは「RAINY LETTER」においては雨粒の作る波紋という現実にある現象が、それを連ねることで文字を象るという非現実性と結びつくことで恣意的に行われ、また、視覚的にはダブルサイズでのプロジェクションによる大画面が本来雨粒という刹那的で微小なものにフォーカスしズームして見せる為の増幅装置として機能すると同時に、それによってあり得ない視点を得た見る者の想像力をも(相対的に)加速・拡大させます。また「Wondjina」では、アボリジニの精霊に準えたタイトルが示すように、より根源的なものへの回帰の暗喩であり、自然の揺らぎを保った情景のシークエンス、水辺や空の蕭々とした様を思わせるシーンが現れては消え、自然な感情の昂りがそれらに呼応し沸き上がってくるようです。
つきましては本状をご覧のうえ、展覧会をご高覧、ご宣伝を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
記:
作家名: |
宮永 亮 (Akira Miyanaga) |
展覧会名: |
「ウォンジナ」 |
会期: |
7月18日(土)より8月29日(土)まで |
営業時間: |
11時−7時 日・月・祝休廊 |
オープニング: |
オープニング: 7月18日午後6時より |
児玉画廊
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