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Press Release

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関係各位

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 児玉画廊|天王洲では、9月2日より10月14日まで貴志真生也「名前=役割 ローカルルール=ローカルフレーム」を下記の通り開催する運びとなりました。
 貴志は、作品とただのモノの境目を際どいバランスの上に表現し続けてきました。児玉画廊|天王洲のスペース?落としの展覧会「外見の違うハードコア」(2016年)においても、工業用の帯電防止シートと木材、規格材用のジョイント金物によるインスタレーション作品、鮮やかなアクリルプレートとセメントによるオブジェを組み合わせた彫刻作品等でその独特の彫刻批判的な思考の一端を提示しました。
 貴志にとって、既成の概念、ありきたりな彫刻手法をなぞることは最も避けるべきことであり、これまでも一般的な彫刻に求められる要素を極力排除しつつ、作品を構成する試みを続けてきました。例えば、3~4m級の規格木材をシンプルな金具や二等辺三角形の合板を用いてキューブ状に組み上げ、それを基本的なユニット構造として空間を占めるインスタレーション作品は貴志の代名詞的な作品スタイルとも言えますが、それらにしても見上げるような大きさや、ダイナミックな空間構造を擁するにも関わらず、作品を構成する素材はまるでプレハブのような、見慣れた工業製品や規格材が最低限の加工で組み合わされているのみです。そこにはその規模から期待される量塊もなければ、重さや強さでもない、言うなれば骨と皮とでも評すべき、素材と構造のシンプルな組み合わせです。しかしその構造のシンプルさ故に見えてくるのは、貴志の細部に対する意識の細やかさや、徹底した方法論の構築、果ては制作作業でさえもシステマチックに行っている様子など、貴志独自の「ルール」(或いは行動原理)のような、底に何かが潜められているような予感です。
 今回の個展においては、特にその独自の「ルール」という点が大きな要因となる作品が展開されています。「何かに名前=役割を与える行為」と貴志は言いますが、例えばトイレットペーパーに「トッペーレッパー」という名前を与えることでトイレットペーパーが「作品」になり、「ただの紐」に絵の具を付け、キャンバスの上で動かして絵の具を着ける役割を与えた場合、その紐は「画材」になるのです。貴志の作品制作においてはこれが「ルール」として常に適用され、例え元々は何の変哲もない発泡スチロールやブルーシートなどの資材であっても、ある役割とそれらしい名前という「フレーム」を与えられる、ただそれだけのことで、作品として見做される、或いは作品に変わり得る可能性が示されるのです。その可能性を端緒に、貴志は「ルール」に「ルール」を重ねて複雑化し、同時にその複雑化をどこまで抑制しながら、ただのモノから作品への転換点にいかに迫り得るか、その飽くなき考究を続けているのです。
 今回の新作では、過去作のインスタレーションで構造の直角を出すために用いた二等辺三角形のベニヤ板や不要になった木片、作品を構想するためのマケット等、すでに一旦その役割を終えたもの、つまりは過去において特別な意味を得ていたものの成れの果てを換骨奪胎する試みを見せています。貴志の「ルール」の考えに則って見るならば、自らが過去に作り与えたその物への「役割」を再定義すること、つまり「名前」を再び付け直すという試みです。例えば二等辺三角形の板は既にビス穴が空いていたり、角が傷んでいたり、何かしら以前の状態に関わる痕跡が残っています。無造作なビス穴はひとまわり大きな穴に綺麗に整形し直し、解体や保管時に傷んでしまった角は美しく切り直して直線を取り戻させ、それを不要だと思わせていた要因を蘇生させておきます。その上で8枚の板を1ユニットとして並べ、その上に油彩でひと続きの描画をします。次に乾燥させるために、わざと8枚を全くバラバラの場所に分けて保管しておきます。そして改めて乾燥後に集め直すのですが、その際、元のようには組み直さずにあえて絵が繋がらない状態にします。このようにしてどこかわざとらしくさえある規則的な段取りを経て、意図的に意味を換装し続けていくのです。その十重二十重と偽装を重ねていくような過程はまさに独自の記号か暗号かを作成するかのようです。
 作品には大なり小なり何かそれを作品として認識させる記号的な側面があります。ビジュアルが美しい、構成に均整が取れている、など分かりやすい表象だけでなく、理解や想定を超えた事象がそこに存在する事を示す、貴志の言う「ルール」のような、それ自体は他者からは目には見えないようなものも含まれるでしょう。貴志が試みる「名前」付けや「役割」の付与という、物の存在する意味を変成させる内面的彫刻とでも言えるその行いは、結果現れてくる作品の外観にも直截的な影響を示し、それが故に貴志の作品は誰しもが見たことのないようなものになっていくのです。貴志の作品を前に分からない(放棄ではなく好意的な意味で)と評するならば、その所以は作品を形作る「ルール」そのものが、他者との共感の上に成り立っておらず、作家自身にしか意味を成さない「ローカルルール」に徹している事にあります。それがまた一つの「記号」として作用することを、枠組み(既存の概念やありきたりな作品のフォーマット)に抗う彫刻としての強い意志を込めて「ローカルフレーム」と呼んでいるのです。つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具
2017年8月
児玉画廊 小林 健



記:

作家名:

貴志真生也 (Maoya Kishi)

展覧会名:

名前=役割 ローカルルール=ローカルフレーム

会期: 9月2日(土)より10月14日(土)まで
営業時間: 11時-18時 / 金曜日のみ11時-20時 日・月・祝休廊
オープニング: 9月2日(土)午後6時より


お問い合わせは下記まで

児玉画廊|天王洲
〒140-0002 東京都品川区東品川1-3-10 TERRADA Art Complex 3F
T: 03-6433-1563 F: 03-6433-1548
e-mail: info@KodamaGallery.com 
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