拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊はこの度、新たにギャラリースペースをオープンする運びとなりました。2015年9月をもって拠点としてきた京都を離れ、東京都内にてそれに替わるスペース展開を模索しておりました。児玉画廊が常に大胆かつ実験的な作品発信の現場であるというステートメントの役割を担ってきた京都のスペースの後継となるべく、より先鋭的な展覧会スペースとして参る所存です。
児玉画廊|天王洲のオープニング展となる本展覧会では、展覧会シリーズ
”ignore your perspective” の第35弾として「外見の違うハードコア」と題し、貴志真生也、関口正浩、和田真由子の三名を取り上げます。
現代において美術は多様なメディア、思想を含み、なおかつ作品形態もそれに応じ
て無限の広がりを見せています。近代以降国際展に見る社会との関連性、現代におい
ては、ともすればアートの名を冠した町興しや企業キャンペーンの使命を担わされます。また一方では、マーケットにおける投機的価値形成、ハイソコミュニティの社交ツール、そしてお洒落アイテム化。など、美術に対して求められる要素も多様化の一途を辿っています。ギャラリーの立ち位置も含め、多くの矛盾を孕むジレンマもまたアートの宿命と言えるでしょう。今ここで美術の有り様のそれぞれについて、善悪や真偽を問おうというのではありません。その渦中においてなお、美術の歴史における中心核:「ハードコア」に連なることを志した制作を直向きに続けている作家が存在する以上、そこに今こそ目を向けずにはおれない、ということなのです。貴志、関口、和田の三名の作品は、間違いなく美術の新側面に寄与するものでありますが、一様におよそ「ハードコア」なるものの想像からは大きく外れた外見をして見えるのかもし
れません。しかし、であるからこそ、彼らの作品が問うているものの重要性とその可能性について注視しておくべきはずなのです。
【貴志真生也】
「見たことのないものを作る」と嘯きながら、ただ闇雲に未知なるものを生み出そうとしているのではなく、あくまで理知的に、彫刻的なるものの分析に基づいたその反証を、新たな美術制作の一形態としようと挑み続けています。ただのモノが美術に転換するその臨界点、それを見極め提示することに作品としての価値を見出しているのです。
【関口正浩】
絵具を皮膜にすることによって「oil on cavas」でありながらも一般的な絵画とは一線を画した絵画面を作り出します。マティス最晩年の切り絵にも見られるように、「平面」という概念について再考し新機軸を与えることをその旨としているのです。皮膜だからこそできる表現、また、皮膜であるがための制限、それらは絵筆では決して得られない、停滞する絵画の新たな段階への突破口を関口に開いたのです。
【和田真由子】
「イメージにボディを与える」というテーマを掲げ、その行為の全てを絵画制作と呼ぶという、絵画の概念を一転させかねない革新的な理念によって制作しています。和田が頭上で想起するイメージが脳裏でいかに見えているか、そのイメージがいかなる強度で浮かび上がっているのか、その状態をできうる限り忠実に現実空間に具体化すること、その為にメディアの選択があり、作品形態の必然性が生まれます。
展覧会名: | イグノア・ユア・パースペクティブ35「外見の違うハードコア」 |
出展作家: | 貴志真生也 / 関口正浩 / 和田真由子 |
会期: | 9月10日(土)より10月22日(土)まで |
営業時間: | 11時-18時 / 金曜日のみ11時-20時 日・月・祝休廊 |
オープニング: | 9月10日(土)午後6時より |