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ignore your perspective 28

Press Release

 拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 児玉画廊|東京では2月28日(土)より4月4日(土)まで、ignore your perspective 28「Super Body Maniac」を下記の通り開催する運びとなりました。児玉画廊の代名詞でもある企画展シリーズ "ignore your perspective”、通算28回目を数える今回は、「Body」という美術における最も普遍且つ不変のテーマを掲げて開催致します。大久保 薫、貴志真生也、久保ガエタン、五藤 彰、坂川 守、高田冬彦、中野 岳、中村奈緒子、和田真由子の総勢9名によるグループショーとなります。
「Super Body Maniac」。「Maniac」は度を越した熱中や手のつけようがない程の狂気の渦中にある人を形容する強烈な言葉ですが、往々にして美術の制作は常人の範疇を遥かに超えた精神と肉体の活動をもって行われるものです。敢えて「Fanatic」でも「Enthusiastic」でもなく、「Maniac」であるのは、彼らアーティストへの敬意と賛辞の冠です。今回ご紹介する9名はいずれも切り口は様々でありながら、その作品の超絶具合は皆目を見張るものがあります。「Maniac」のみならず、あまつさえ「Super」と輪をかけるのは、やはり尋常ならざるが故、それも度し難い程にです。「Body」は世に生を受けるもの全てが持つ、当然の、自明のものとして、日常の中で意識される事は少ないでしょう。だからこそ、ひとたび目を向ければこれほど想像力を豊かにさせる題材は他にないとも言えます。彼らの作品によって「Super」で「Maniac」な予想もつかぬ角度から突飛も無い方向へ「Body」が突き回されていくのです。今展覧会において我々が求めているのは、決して中途半端なものではなく、彼らの作品が常に突端にある物であることを認めざるを得ない、衝撃です。
つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

[作家紹介]

大久保薫
まさに「肉体」をテーマにしたペインターで、人体像、あるいは人や肉の隠喩として選んだ別のモチーフなどを描いています。キャンバスに向かう前に写真(時に自我撮りヌードなど)やネットの画像を見て「肉体」についてのドローイングを描き込みます。そこで、描きたい「肉体」の感じを掴み、作品はその時点で本質的には完成しています。いざキャンバスに筆を乗せる際には、清書作業のようにして、ドローイングを通して掴み取ったイメージを冷静になぞり描くのです。あからさまな執着や興奮はその強く伸びやかな筆触からは見られず、「肉体」というテーマに深く固執するが故に強いて傍観する立場を保とうとしているような、秘めた衝動を感じさせます。

貴志真生也
マテリアルが作品に変わる転換点を探るような彫刻及びインスタレーションを制作しています。ビニールシートや木材、発泡スチロールなど、いかにも「資材」といった素材をどこか様式的に、けれども、全く何の意味も示さぬような評し難い造形へと仕立てていきます。空間を支配しつつも空虚な、ボディの外殻だけがあって質量が抜け落ちてしまったかのような作品は、美術らしさとらしくなさの境界を鋭く見定めようとするかのようです。

久保ガエタン
オカルトや陰謀論など、正統とされるものから異端視されてきた思想や技術についての自己研究をベースにインスタレーションを制作しています。例えば低周波やポルターガイストのような目には見えないエネルギーが、物理的にしろ精神的にしろ何らかの作用をもたらすことにインスピレーションを得て、その現象を別のシステムに置き換えて見せるのです。例えば、「プー」というブザー音が超高音から知覚できないほどの超低音まで次第に下がっていくようにプログラムし、音程が下がるのと反比例するように強大になっていく振動を伝達させることで作品の構造全体が地震のように揺れ動く作品や、二畳ほどの室内空間を模したキューブを作り、それを超強力モーターで回転させて、内部に向けて固定されているカメラでモニターすると、置かれている家具などが飛び交う激しいポルターガイスト現象が再現される作品など、内容・ビジュアルは常に衝撃的です。今回は過去実際に存在した躁鬱病を治療するための身体拘束具をモチーフにした作品を展示します。

五藤彰
「TRY-MEN」というシリーズで制作している 3DCGによるアニメーション作品を出品します。怪獣のような容姿をしたラグビープレーヤー達が、走ったり戦ったりと色々アクションを起こすのですが、体の動作や表情、ちょっとした所作の一つ一つにエンターテイメント性と同時に映像的に魅せる工夫がされています。人間らしくないCG特有のぎこちなさ、CGのテクスチャによって上手く表現されているモノ感、そういった妙なバランスの上に作られた世界観が、違和感とリアリティを同時に感じさせて目を惹き付けるのです。

坂川守
ボディービルダーの艶張りのある筋肉を描いた作品シリーズから出発し、以降一貫して身体をモチーフとしたペインティングを制作しています。目で見るというよりも体感させるような「肉」っぽさの描写に特徴があります。例えば、ミッキーマウスやアンパンマンを描いて絵具が生のうちにセロファンシートで押しつぶしてハムの断面のようなマーブル様にしてしまうものや、ガーゼをキャンバスの代わりに使って絵具を染み込ませて傷口から体液が滲んでいるような表現をしてみたりとエキセントリックな内容ではあります。しかし、作品の内容とは真逆に見た目は全くグロテスクなものではなく、むしろモチーフがキャラクターやおもちゃであることからポップで軽やかな色彩と柔らかいフォルムで構成されています。その絵の成り立ちにして毒気のない画面の明るさが、アンビバレントな魅力になっています。

高田冬彦
フェミニズム、エロティシズム、いじめ、ポップ・アイコンの栄光と悲哀、人の歓心と同時に心の闇をつくような棘のある主題を徹底的に揶揄するようなスタンスで作品を作っています。ほとんどの作品において自演し、自分自身の肉体や欲望を過度にさらけ出すような自己顕示欲を露骨に感じさせるのですが、それも計算ずくでこちらに挑戦的な視線を差し向けているように感じられます。それに対して真剣に向き合えば良いのか、受け流すべきなのか、そうした鑑賞者の心の葛藤も馬鹿らしく思えるほどに振り切れた高田作品に対しては、思考を放棄して、ただ身を委ねてしまえば良いのかもしれません。

中野岳
東京藝術大学の彫刻科を修了し、プロジェクトベースの作品制作を中心に発表しています。児玉画廊では初紹介となる今回、中野の作品の中でもおそらく特に異様な存在感を放っている作品を出品します。「脱皮」というタイトルの作品ですが、自らの全身にボンドを塗りたくって数日過ごし、それをまさに「脱皮」するごとく丁寧に剥がして、その制作時のドキュメント映像とともに展示します。脱皮する際に、最後には癒着してしまった髪の毛まで剃り落として、まさに「中野岳」の完全な抜け殻標本といった様相は、身体の彫刻としてのある特異な到達点にすら到っているように思えます。

中村奈緒子
作品形態は様々ですが、徹底的に細かい作業に没頭していく制作スタイルで、あまりにやり過ぎるが故にある種の狂気を感じさせる程の作品となります。今回予定しているのは七宝焼きの技術をつかった人体像で、頭部や胴体、手足のパーツを銅板で作って、その上に釉薬と銀線、ガラスを焼成して七宝にしています。通常の七宝ではあり得ないくらい微細な細工、しかも細密なまるでインクドローイングのような図案なども取り入れてあり、ただでさえ集中力のいる七宝のプロセスを考えるに、驚愕の作品です。身体というよりも精神を削る様にして作られる作品は必見です。

和田真由子
頭の中にある「イメージ」をどのようすればリアライズできるのかをテーマに作品を制作しています。自分の中では、多色刷りの版画のように物や景色の立体感がレイヤーに置き換わって見えている、という持論が全てのベースとなっています。遠景から近景まで複数層のペラペラな像が何層も重なったら、それは平面的なもの(の集積)だけれども実態に即した立体空間を表しているとも言え、逆にそれを立体的に組み立てたらペラペラで全く構造的ではないけれども空間的なドローイングとして成立するのだ、というロジックで制作しています。半透明のビニールシートなどを重ねて表現することでそれを具現化してみせようとしています。平面だけれども立体、立体だけれども平面、というような言葉上の矛盾が、彼女の「イメージ」の解釈の中では形として成立し、この現象を和田は「イメージにボディを与える」ことと呼んでいます。



敬具
2015年2月
児玉画廊 小林 健



記:

展覧会名:

イグノア・ユア・パースペクティブ28
「Super Body Maniac」

出展作家: 大久保 薫 / 貴志真生也 / 久保ガエタン / 五藤 彰 / 坂川 守 / 高田冬彦 /
中野 岳 / 中村奈緒子 / 和田真由子
会期: 2月28日(土)より4月4日(土)まで
営業時間: 11時-19時 日・月・祝休廊
オープニング: 2月28日(土)午後6時より


お問い合わせは下記まで

児玉画廊 | 東京
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15
T: 03-5449-1559 F: 03-5421-7002
e-mail: info@KodamaGallery.com 
URL: www.KodamaGallery.com


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