kodama Gallery
ignore your perspective 21

Press Release

 拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 児玉画廊|東京では4月19日(土)より 5月24日(土)まで、Kodama Gallery Collection - ignore your perspective 24 油画考#1「コンセプト、イメージ、画材のコンジャンクション」を下記の通り開催する運びとなりました。今展覧会では、大槻英世、清水信幸、杉本圭助、関口正浩、森下明音の5名を紹介致します。いずれの作家も、絵画を標榜しながら絵画の絵画たる所以を探求し続けており、絵画であるためのコンセプト、頭上にあるイメージを捉えるための手法、そして実際的な画材/技法について、各々が独自のアプローチを示しています。
 大槻英世は、今回児玉画廊初紹介となります。一見するとマスキ ングテープを画面に貼付けて、線描の代用としている単純な作品かと、大槻作品を初見の場合ほぼ確実に見誤ります。しかし、実はアクリル絵具によってテープを模倣した描写をすることによって制作されています。テープの「付き」が強い箇所は下地が濃く透けて見えるというような僅かなニュアンスや、幾重にも交差して重ね貼りしてできる厚み、端が剥がれかけてめくれている様子など、描画の技術と絵具の特性を最大限に活用し「擬態」してみせるのです。
 清水信幸は砕石のような造形物を油絵具の塊から塑成しキャンバス上に取り付けるという、およそ平面的でない絵画作品を制作しています。石を触って遊ぶという、誰しもが経験のあることを 逆手に清水は絵画表現の中に作家と鑑賞者の間で共感される「触感」を求めています。作品全体の構成は抽象絵画然としていながらも、目で触るとでも言えば良いのか、立体的に造形されている絵具の塊を前に、鑑賞者の目は作品を正面からだけでなく、多面的なその表面をなぞる様に縦横そして細部へと視線を潜り込ませる様に誘導されていきます。すると重み、堅さ、温度、肌理、などの「石の手触り」が視覚から呼び起こされ指先と掌に再現されるのです。油絵の具で可塑性を得る為に、本来油絵具に含有する油分を新聞紙等に吸わせて「油抜き」することで、粘土のような状態にして削り出すように
石の立体的な造形を形成しています。
 杉本圭助は、平面、立体、パフォーマンスなど多岐にわたる制作活動を続けています。今回は展覧会趣旨に沿って、杉本の平面作品の最新シリーズ「マネキン」にフォーカスします。二色のアクリル絵具を複数層に分けて重ね塗りしたものに彫刻刀で縦横にグリッドラインを彫り込んでいます。角刀による鋭利な切り口から地層のように内側に秘されていた色彩の断面を除き見る事が出来ます。下層から塗り重ねて表層に至るまでの時間の経過と物理的な積層を彫り返して、絵画の内部を曝け出すのです。絵画を「裏返し」、画面上に新たな次元軸を創出するという杉本の本作の意図において「マネキン」とは杉本の根本テーマである「人間」の「裏返し」を暗に意味しています。
 関口正浩は、現在児玉画廊の京都のスペースで個展「遠くの正面」(4/26まで)を開催しています。油彩で造った「膜」を使用しキャンバス上にコラージュするように制作された抽象的/幾何学的な画面、そしてその「膜」という性質上、襞や皺、破れ、折れなど立体的な要素が必然的に画面に生じます。これまではその状態をもって関口の絵画面の特殊性を提示してきたのですが、最新シリーズ「遠くの正面」では、作品を予め額装し、そのガラス面に内側から画面を押し付けるようにして立体的な襞や皺を強制的に平滑化する、という試みを見せています。
 森下明音も、京都の児玉画廊においてKodama Gallery Project 42「安らぎと食事の労働」を関口の個展と同時開催中です。森下は、絵画を「記憶している感覚を可視化する」行為と認識しています。しかし、森下の個人的な記憶は鑑賞者と共有されるためのものではなく、単に森下が絵画を描くためのきっかけに過ぎません。「記憶している感覚」は絵具という物質に変換されて行く過程でズレを生じ、次第に森下の意識は「記憶している感覚」ではなく「絵具という物質」にのみ対峙するようになります。「記憶」から「物質」を経た「イメージ」の生成、そうして描かれた絵画は、制作者である森下にとっても未知のものとして立ち現れるのです。
 今回ご紹介する五名の作家は、各々の絵画の志向性、絵画に望むイメージの在り方、素材に対する態度、その全てにおいて異なる立ち位置にあり、しかし殊「絵画」に対する攻究という一点において拮抗する先進性をもって臨んでいます。彼らの作品を「コンセプト、イメージ、画材のコンジャンクション」という見地から提示する事で絵画の可能態を探っていくことができるのではないかと考えます。
 つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具
2014年1月
児玉画廊 小林 健



記:

展覧会名:

イグノア・ユア・パースペクティブ24
油画考 #1 「コンセプト、イメージ、画材のコンジャンクション」

出展作家: 大槻英世 / 清水信幸 / 杉本圭助 / 関口正浩 / 森下明音
会期: 4月19日(土)より5月24日
営業時間: 11時-19時 日・月・祝休廊
オープニング: 4月19日(土) 18時より


お問い合わせは下記まで

児玉画廊 | 東京
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15
T: 03-5449-1559 F: 03-5421-7002
e-mail: info@KodamaGallery.com 
URL: www.KodamaGallery.com


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