ポップさの中の強い反骨精神、美しさの中のハッとするキーワード……混沌とした世の中で常に何かをキャッチし、アートを通じメッセージを伝えていく、コンセプチュアルな3名のアーティスト。そんな彼らが携わるブランド「A.FOUR Labs」が、東京・白金にある「児玉画廊」にて展覧会を開催する。
ロンドンからは、パンク気質の高いファインアーティストのルーカス・プライス。ロサンゼルスからは、反骨精神旺盛な作品がアート界より高い評価を受けているカリ・ソーンヒル・デウィット。そして東京からは、ストリート気質の高いアートを様々な方向から提案する倉石一樹……各々の土壌でカウンターカルチャーのド真ん中に立ちながら、真髄を掴む美しい作品を打ち出す彼ら。その作品が一同に並ぶことにより化学反応が起こることは間違いない。
今回の展覧会の主宰「A.FOUR Labs」は、”服もアートの一部”というコンセプトの元、倉石とルーカス・プライスが2012年にスタートしたブランドである。例えばルーカスのペインティングを落とし込んだ生地を用い、倉石が総柄のアウターやパンツをデザイン。あるいはカリのアートピースを使用したアクセサリーを倉石が制作するなど、常にファッションとアートが融合するアイテムを発表し続けてきた。
本展の内容だが、まずルーカスは、動画をペインティングに落としこんだ書き下ろし作品を展示する。壁へのスプレーペイントや、花を盗む行為などをビデオに収めた長編動画を作成し、そこから場面を切り取り、ペインティングする。つまりモーションをフリーズさせ、動画をペインティングに落としこむと言うアイデアを具現化した作品である。モチーフである言葉と花は彼が日常的に好きな物であると言う。そんな彼の日常をイメージとして切り取った作品たちである。
そしてもう一方のカリは、代表作であるプラスティック・サインと、そこから派生したバナー作品の他、初登場となる花柄の生地を使用した新作や、倉石と共同制作した花瓶も展示する。花瓶は、400年の歴史をもつ日本の磁器産業を初期から牽引してきた産地の一つ、長崎県波佐見地区の窯元の職人とともに、伝統的技法と現代技術を駆使し幾度も試作を重ね完成させた物である。技術面のディレクションは倉石の依頼により丸若屋(http://maru-waka.com)が監修を行った。日本の伝統技術が作り出したカリの新作は、本展の中でも特にユニークな作品に仕上がった。展示中はフラワーアーティストの東信によりフラワーアレンジメントが施される。
またカリの特徴的なオールド・イングリッシュ調のフォントを使用した「メモリアル・スウェット」を日本で初展示。このスウェット・シャツは彼の代表的な作品の一つで、80's/90'sのLAギャングが故人追悼に着ていたメモリアル・スウェットシャツからダイレクトに影響されたものである。著名人や戦死者を祭り上げるだけでなく、視覚的ヒントとそのファミリーにのみ通じる暗号的テキストを身につけることでコミュニケーション・ツールとしての役割も担っていた。ある時カリはまさしくこれ、というやわらかいオールド・イングリッシュ・フォントと熱プレス機を製造している場所を見つけ、自身の手でスウェットを制作するようになった。そのメモリアル・スウェット一枚の中に、ビルボードカルチャー、ご近所同盟、階層化された友人関係、血の結束、などがパッケージとなってクールに仕立て上げられる。オールド・イングリッシュ調のフォントの中に、当時のLAの空気と共にそこに永遠に閉じ込めるかのように。
ファッションとは、それを着用することで、アート同様にヒエラルキーや文化的アイデンティティーを外部に発信しながら他者とのコミュニケーションを可能にする消耗品である。現代におけるファッションは、コンテンポラリー・アートと密接不可分なものとなった。アートはもはや宗教やイデオロギーではなく、マーケティングに支配されてしまったからである。カリは、アート作品と洋服の境界線をぼかしながら、作品の主題同様に観客にアートの役割とステータスに関する疑問を投げかける。商業的役割を排除した先にあるアプロプリエーション(作品の流用、盗用)とコンセプト、アンデンティティーとライフスタイル、階級とセンスと言った複雑なアイデンティティーの関係性を可視化させることへのチャレンジである。インスタレーションとして、観客参加型の「メモリアル・スウェット」制作の場も設けられる。会場で直接カリと話しをし、アーティスト本人がワードをセレクト。そしてそのワードを、倉石が今展覧会のために制作したスウェットのボディにその場でプリントし、世界に一枚の「メモリアル・スウェット」を作成する言う。アーティストとともにアート・ピースを制作し作品本来の意味を知る事が出来る貴重な体験。是非この機会に参加してみて欲しい。
<アーティストプロフィール>
Lucas Price_ルーカス・プライス
ロンドンを拠点に活躍するアーティスト。初期はグラフィティを中心に、バーニングキャンディの設立メンバーとして活躍。イギリス名門美術大学ロイヤル・オブ・アートに在籍し、グラフィック、油絵、スカルプチャー、そしてインスタレーションなどを学ぶ。作品はイギリスを代表する現代アートを扱う美術館テート・モダンにも展示。グラミー賞を受賞したバンクシーのドキュメンタリー映画『Exit Through the Gift Shop』(2010年)にも登場し話題を呼んだ。ファッションでは倉石一樹とともに、アートをファッションに取り入れた「A.FOUR Labs」を展開中。
www.lucasprice.com
Cali Thornhill DeWitt_カリ・ソーンヒル・デウィット
1973年カナダ生まれ。ロサンゼルスで育ち、現在もロサンゼルスを拠点にマルチビジュアルアーティストとして活動中。アーティスト集団「WSSF」を率いる他、音楽レーベル「Teenage Teardrops」も運営。オールド・イングリッシュ調のフォントを使用した作品を始め、メッセージ性の高いワードを使用したプラスティック・サイン・シリーズなどの作品が話題を呼び、現代アート界からも高い注目を集めている。またジンやミュージックビデオの制作、フォトグラファーとしても活躍。ファッションでは「A.FOUR Labs」を始め、「UNITED ARROWS」「OFF WHITE」などとコラボレーションも行っている。
wssf417.tumblr.com
Kazuki Kuraishi_倉石一樹
1975年東京生まれ。高校卒業後、スノーボードや自転車でのコロラド留学を経た後、グラフィックアートを学ぶためにニューヨークへ。帰国後は、ファッションをメインにブランドディレクター、グラフィックアーティストとして活躍。ファッションではこれまでに「adidas」「CASHCA」などでクリエイティブディレクターとして活躍した後、現在はブランド「THE FOURNESS」「A.FOUR Labs」を手掛ける。また原宿にオープンしたセレクトショップ「Heather Grey Wall」もディレクション。音楽面ではdelomafiaで活躍をするNAOTOとともに、バンドIS and ISMでも活躍中。
afourlabs.com、thefourness.com、heathergreywall.com
展覧会名: | A.FOUR Labs presents. |
作家名: | Cali Thornhill DeWitt(カリ・ソーンヒル・デウィット) Lucas Price(ルーカス・プライス) Kazuki Kuraishi(倉石一樹) |
会期: | 2月10日(水)より2月27日(土)まで |
営業時間: | 11時-19時 日・月休廊 *2/11(木・祝)は開廊 |
オープニング: | 2月10日(水)午後6時より |
お問い合わせは下記まで
A.FOUR Labs
URL: http://afourlabs.com
児玉画廊
〒108-0072 東京都港区白金3-1-15
T: 03-5449-1559 F: 03-5421-7002
e-mail: info@KodamaGallery.com
URL: www.KodamaGallery.com